75歳 現役編集者の “徒然なる我儘に”

じゃこめてい出版の最年長編集者が手掛けた書籍の紹介と思い出の日々を綴る。人生の編集日記。

ウチのちりつもばあちゃん その1

「ええがね、ええがね、こーでええがね」

 

 本が出てからわかったことですが、「99歳ちりつもばあちゃんの幸せになるふりけ」のおばあちゃんと、わが家のおばあちゃんは誕生日が同じで、しかも亡くなった歳も同じ99歳。ビックリはこれだけではなく、同じように姉弟の孫二人を預けられ、育てあげてくれたことまでまったく同じ。

 

 こんなふしぎなめぐりあわせ、よほど御縁があったとしかいえませんが、うちのおばあちゃん、「ちりつもおばあちゃん」とはエライ違いだと、育てられた40過ぎた二人の孫娘と息子が口をそろえていいます。ヨメであり後期高齢者である私も、まったく同感で、心に残る教えなどはきいたこともないと思っていました。

耳に残っているのは本人は標準語で話しているつもりの出雲弁――と……当のおばあちゃんは生きていたらきっと「おまえさんら なにいっとらっしゃる、おんなじだわね」ということでしょうが。 

 

 ウチのちりつもさんは出雲の出身で結婚するまでは出雲で暮らしていたので、自分では標準語でしゃべっているつもりでも、聞く人の耳に届くとほぼ出雲弁。「ひとつ」は「ふとつ」で、一つなのか二つなのわからない。「すこしちょうだいは」「ちょんぼしごしなはい」となり、ほぼわからない。

 

 ウチのおばあちゃんこと「ハーさん」(五人姉妹の中ではこう呼ばれていたそうです)は、戦前は満州で暮らし、戦争末期に日本に帰国、故郷出雲に戻って慣れないお百姓仕事をすることになり、生まれて初めて野菜だけでなくお米まで作ったそうです。

東京で暮らすようになっても「どげなところでもかぼちやでもなんでもつくれるけん」がご自慢。連れ合いが病弱のため野良仕事はすべて姑が肩代わりし、その上子どもの面倒もみるわけでその大変さは想像を絶するものがあります。戦後戻った故郷でおくらざるを得なかったワイルド生活。そこで培われた剛胆さで、都会生活で出会ったゴキブリも手づかみで仕留め、ねずみもヘビ(まむしだったも!!!と後で言ってましたが)も見事、×○▲★×◆!?したのでした(文字するのもコワイ)。

とにもかくにも戦争を挟んで生き抜いた大正生まれの女性は強い! す、すごい!!の一言です。

 

 思い出すのはデビ夫人を異常に尊敬していたこと。テレビに出でくるたびに「このふと(人)はほんにえらい。ふとり(一人)で今の地位をつかまれたわね」と感際まったように言い、テレビ画面の彼女を食い入るように見ていたこと。今もテレビなどで夫人を見かけるとそのときの姑の顔がまざまざと浮かびます。

 相撲は何故か北天祐の大ファンで、負けると身をよじって嘆き悲しみ「あーちゃいやだわ、あーやちゃ(あの人は)どげして負けえかね。バカじゃなかろうかいねえ。だあか(誰か)ちゃんといってあげんもんかね」と怒り、うなり、嘆く。

 お得意の料理は、「昭和の母」の定番、鳥の唐揚げ、煮物、煮魚、カレーライス。

なにかの記念日はちらしずしかお赤飯、又は手作りの皮で作った水餃子。満州で覚えたというこの水餃子の味は絶品、プロ顔負けのおいしさでした!

 針仕事も得意で人の着物も仕立てたし、既成服も自分サイズにどんどん直してしまう。遺された洋服にはサイズあわせのスナップがいっぱいついていました。

何処で覚えたのか廃材の木片を釘で打ちつけ勝手口の簀の子にしてみたり用途不明の台を作ったり。

どんな布きれも木材もとりあえずとっておくので保管場所に困り、こっそり処分すると、そんな物に限って「あれはどげしたかね」といわれ「さあ、どげしましたかね」と一緒に探すふり。冷や汗。

 買ったばかりのウィッグはさくさく自分で切ってしまい、切りすぎてお店にもっていくと「あらあら奥さまご自分で切ってしまわれたのですかあ」と店員さんにあきれられ、でも「ええがね、ええがね なんとかならんかねえ」とあくまで自分サイズにこだわりねばりにねばる。何事も気にしないで我が道を行くふと(人)でもありました。

 

 あれやこれやとりとめもなく思い出しているうちに、ウチのちりつもばあちゃんには孫だけでなく嫁である私もまるごと御世話になってきたこと、そしていろいろな意味で余人を持って代え難い人物だったのかも、と気づかされました。

 こうして思い出すことがなによりの供養、今日もハーさんばあちゃんのすましてほほえむ写真に手をあわせました。 

 家の数だけおばあちゃんの人生が家族の思い出の中にいっぱいつまっているのでしょうね、きっと。それぞれの「ウチのちりつもばあちゃん」のお話しもぜひお聞きしたいものです。

「ちりつもばあちゃん」を読んでいたらたら、こんなメッセージをみつけました。

「十人十色ちゅうけど、言葉もちがえば言い方もちがう。愛情の表現もちがう」すると「そげそげ」(出雲弁で「そうそう」)と言うハーさんの声がしてきました。

 

 

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『99歳ちりつもばあちゃんの幸せになるふりかけ』

 たなか とも  著 定価(本体1000円+税)