80歳 現役編集者の “徒然なる我儘に”

じゃこめてい出版の最年長編集者が手掛けた書籍の紹介と思い出の日々を綴る。人生の編集日記。

ついに決行!シモキタ散歩3 お煎餅屋さんで「小丸」に出会う

シモキタに続く細い道をたどりなんとか繁華な通りに出ることができたとたん、緊張がほぐれたのか急に足取りと気持ちが重く感じられ、とりあえず美味しそうなケーキのメニューが目にはいったカフェで一休みすることに。

心配性のわたし、こんな調子で大丈夫かと先が思いやられました。

でもしばらく休むと元気が じわっと戻ってきて、シモキタ散歩は続けることができそうな気持ちになりホッとしました。

 

すると現金なものであちこちに行ってみたくなってきて、いろいろ思い出してきました。

一休みしたカフェのあたりにはたしか、江戸時代の儒学者荻生徂徠の子孫がやっていたという古本屋があったし、古レコード屋さんでは裏面のないSP版のカルーソという有名なテノール歌手の「女心の歌」を買ってよく聴いたことも、「とちくら」という名前の区長がやっていた銭湯も、そういえば戦後間もなくだったので駅の一角に闇市のようなお店もあった…などなど、「シモキタ思い出通り」はつきません。記憶をたどり散歩を再開。

もちろんどれもありませんでしたけれど。

 

もしかしたら昔遊んだ友達と出くわすのでは、とかすかな期待もあって駅周辺を歩いていると、なにか懐かしい感じのするお煎餅屋さんがありました。

お店のつくりが古いので、いつごろからあるお店ですかと尋ねたところ

かなりお歳のお店の人の話では70年前に出来たお店とのこと。

お店の裏には今もお煎餅をつくる工場もあるそうで、本格的なお煎餅屋さんだということがわかります。

ということは、わたしが小学生のころなので、当然このお店も知っているはず? なのにどうしても思い出せません。

いろいろ聞いてみたいと思ったのですが、急に子供に戻ってしまったのかなんとなく恥ずかしくなって、根掘り葉掘り聞くのはやめ、ガラスのケースに入ったいろいろなお煎餅を買うことにしました。

 

小さな丸い形をしたその名も「小丸」という塩煎餅には見覚えがあり、おやつによく食べていた記憶がよみがえってきました。

そして思わず「これください」と買い求めていました。

定番品川巻きもいっしょに。

 

家に帰って食べてみると、なんともなつかしいしっかりとした醤油味。

昭和レトロということばには違和感がありますが、強いて言えばそんな味になるのかな?

 

ここまで歩いてきて手持ちの万歩計を見ると、なんと8039歩!

散歩を再開してよかった。

この小丸煎餅はリハビリ散歩8千歩突破記念品ということで、大切にいただくことにします。

 

そして、お煎餅屋さんを出て、来た道をゆっりゆっくりもどることに。

井の頭通りに面した駐車場にたどりついたころは、もう陽が傾きかけていました。 

同時にわたしの背中も大分傾きかけていることを指摘され、思わず背筋をのばしましたが。

 

夕食をとったファミリーレストランでは、快い眠気につつまれ、みんなの話し声を子守唄にしてウトウト。

「よくずっーと、と歩けたね! 」

同行してくれたみんなから、あかちゃんが初めて立って歩いたみたいに褒められながら帰途につきました。

本当にありがとう、一緒に歩いてくれたみんな。

 

真底疲れましたけど、充足感に満ちた一日でした。